ロジビズ :月刊ロジスティックビジネス
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2006年6号
海外Report
仏ジェフコプジョーシトロエンの物流子会社新CEOの改革で企業規模が二倍に

*下記はPDFよりテキストを抽出したデータです。閲覧はPDFをご覧下さい。

JUNE 2006 46 新CEOの手腕で成長が加速 ジェフコが成長へ向けてギアを入れたのは 一九九九年のことだ。
この年、親会社である プジョーの自動車部門のトップを五年務めた ルイ・デフリン氏がジェフコの会長兼CEO に就任した。
同氏は就任後すぐに「製造業者 のためのロジスティクス業者」への変貌をス ローガンに掲げ、荷主のサプライチェーンを 最適化したいという要望にこたえられるよう な体制づくりを急ピッチで進めていった。
具体的には、それまで社内にあったネット ワーク部門と自動車の完成車輸送部門の二部 門に加えて、新たにロジスティクス部門を設 置し、ジェフコの牽引役と位 置づけた。
その 背景には、ロジスティクス部門を強化して、 外販を取り込むことができれば、全体の物量 が増えて、親会社の物流費削減に貢献できる と同時に、自社の利益拡大にもつながるとい う期待感があった。
実際、この方針を打ち出して以降、ジェフ コの全売上高に占めるロジスティクス部門の 比率は、一〇%(二〇〇二年)、十一%(二 〇〇三年)、十二%(二〇〇四年)、十三% (二〇〇五年)と着実に伸びている( 図1 )。
デフリン氏がCEOに就任する前、同社の 売上高は約一四・七億ユーロ(=約二〇〇〇 億円)だった(九八年十二月期)。
それが現 在(二〇〇五年十二月期)では三〇億ユーロ とほぼ二倍に拡大している。
営業利益は九八 仏ジェフコ プジョーシトロエンの物流子会社 新CEOの改革で企業規模が二倍に フランスのプジョーシトロエングループ(PSA)の一〇〇%物流子会社 であるジェフコ(Gefco )は九九年以降、「製造業者のためのロジスティクス 企業」を標榜し、外販の拡大を軸に大きな成長を遂げてきた。
自動車産業で 培ってきたノウハウをハイテク産業などに応用している。
ここ数年、製造業 のサプライチェーンがグローバル化してきたのを受けて、同社では海外ネット ワークの充実を図り、さらなる成長の原動力にしようとしている。
ケーススタディ ジェフコの完成車輸送とパーツのオペレーション 47 JUNE 2006 年に七三〇〇万ユーロだったのが、二〇〇五 年には一億四四〇〇万ユーロに。
さらに従業 員も五五〇〇人から九〇〇〇人に急増してい る( 図2 )。
外販の伸びも著しい。
九八年の外販収入は 五億四九〇万ユーロにとどまっていたが、二〇〇五年は十一億五七〇〇万ユーロと二倍強 にまで拡大した。
外販の主な取引先はトヨタ 自動車、日産自動車、ヤマハ発動機といった 日系メーカーや、GM、米国の農業機械メー カーであるジョン・ディアなど。
外販強化を 打ち出したデフリンCEOの舵取りが正しか ったことは、これらの数字が証明していると 言えるだろう。
外販に不可欠な国際展開 ジェフコの設立は一九五〇年。
自動車メー カーのプジョーの物流子会社として発足した (プジョーがシトロエンとの合併でプジョーシ トロエングループとなったのは七六年)。
六〇 年代、七〇年代には、四件の小規模なM&A (企業の合併・買収)に踏み切り、ネットワー クを隣国ベネルクス三国とドイツへと広げた。
八〇年から九〇年代にかけては、さらに西ヨ ーロッパへとネットワークを拡大した。
進出 順に、イギリス、スイス、ポルトガル、スペ イン、イタリアとなる。
デフリン氏がCEOとなった九九年以降は、 南米、アジア、中欧・東欧へとネットワーク の拡大を図った。
進 出したのは、アルゼンチ ン、ブラジル、ポーランド(いずれも一九九 九年)、モロッコ(二〇〇一年)、トルコ(二 〇〇二年)、チュニジア、ロシア、チェコ(い ずれも二〇〇三年)、中国(二〇〇四年)。
海 外現地法人の数は、九八年の七社から二一社 にまで増えた。
同社のクリスチャン・デレックス広報部長 は、海外戦略を次のように説明する。
「当社は経済成長率の高い国を選んで進出 してきた。
一つはそこに荷主の需要があるか らで、もう一つの理由としては、新興の市場 ならば、国際物流の分野では後発組に当たる 当社にもビジネスチャンスがあると考えるか らだ」 例えば、昨年に進出した中国では、それ以 前にもフォワーディング業務で一〇年の実績 があったが、プジョーシトロエンが武漢に工 場を稼働させるのを機に、現地にジョイント ベンチャー(JV)を立ち上げた。
JV一社 を作っただけで、二〇〇五年の中国における同社の売り上げは前年の二〇倍となり、アジ ア全体の売上高四七〇〇万ユーロ(約六五億 八〇〇〇万円)の大部分を占 めるようになっ たという。
こうした積極的な海外進出によって、ジェ フコの全売上高のうち、国際物流の占める比 率は三割超にまで拡大した。
同時に国際物流 の強化はロジスティクス部門の売上高の増加 にも直結した。
「ここ数年でアジア、南米、中欧・東欧に進 出したことで、それらの地域間で新たなモノ の流れが生まれた。
また、ホームグランドで 図1 ジェフコの売上高の内訳 2005年12月期の売上高 単位:百万ユーロ 完成車輸送部門 ネットワーク 部門 1506 50% 378 13% 1095 37% ロジスティクス 部門 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 3500 3000 2500 2000 1500 1000 500 0 PSAグループ向け 外販 〈売上高〉 〈営業利益〉 180 160 140 120 100 80 60 40 20 0 営業利益 図2 ジェフコの売上高と営業利益の推移 (単位:百万ユーロ) JUNE 2006 48 あるフランスを含む西ヨーロッパとの取引も 活発になった。
つまり、進出した国での物量 増と輸出入業務が一体となってジェフコの利 益に貢献している」とデレックス広報部長は 説明する。
ジェフコの外販のもう一つの特徴は、完成 品輸送(アウトバウンド)よりも、調達物流 (インバウンド)の比重が高いことだ。
完成品 輸送の九〇%は親会社プジョーシトロエンに 対する売り上げであるのに対して、調達では その比率が四〇%にとどまり、外販が六〇% に上る。
各メーカーともに完成品のネットワークは その 物流子会社も含めてほぼ出来上がってい る。
これに対して、調達物流は変化が激しく、 公開コンペなどを頻繁に開き、取引先の3P Lを見直す企業が少なくない。
ジェフコが調 達物流の外販獲得に成功しているのはこうし た背景があるためだ。
社内のモデルとなるセンター業務 ジェフコが社内で調達物流と国際物流業務 のモデルケースとしているのが、イギリス海 峡に面したフランス西部の港湾都市ル・アー ブルにある国際物流センターだ。
二〇〇二年 夏の開設で、延べ床面積は三万二〇〇〇平方 メートル。
ヨーロッパ各地から部品を集荷し て、プジョーシトロエンの工場があるブラジ ル、アルゼンチン、中国に輸出している。
こ のセンターで蓄積した調達と国際物流のノウ ハウをひな型として全社で共有し、さらなる 外販につなげようとしている。
同センターのセンター長であるジャン・ピ エール・ゴーティエ氏は「一台の自動車を組 み立てるのに平均で十二立方メートルの部品 が必要だ。
このうち十一立方メートルはボデ ィーパーツやダッシュボードなどの大型部品 で、これらは部品メーカーが直接組み立て工 場に納入する。
このル・アーブルのセンター で取り扱うのは、残りの一立方メートルの調 達物流だ。
体積では一〇%にも満たないが、 アイテム数にすると全体の八〇%を占めてい る。
当然、細かい作業が必要になる」と説明 する。
大まかなモノの流れは以下の通り。
ヨーロ ッパにある九〇〇社の部 品メーカーから九〇 〇〇種類の部品をジェフコのネットワークを 使って集荷する。
物流センター内で荷受け、 流通加工、仕分けした後でコンテナに積み込 み、港から輸出する。
ブラジルへは週二便で 十一日、アルゼンチンへは週二便で一四日か かる。
中国へは週一便で、三五日かかって武 漢の工場に到着する。
部品メーカーと工場、物流センターはジェ フコのEDI(電子データ交換)システムで つながっており、海外三カ国の工場が部品を 使って組み立てを始めると、自動 的にその情 報が部品メーカーと物流センターに伝わる。
八〇%の部品は、二四時間以内にジェフコの トラックが集荷してセンターに運び込まれる。
一日平均で七〇台のトラックが、八五〇〇 ケースの部品を運び込む。
トン数にすると四 週1便 週2便 海上14日 週2便 海上11日 ブエノスアイレス リオデジャネイロ 図3 ル・アーブルの国際物流センターの業務 24時間で集荷 海上26日+河川9日=35日 900社の部品メーカーから 9000種類の部品を集荷 ル・アーブル国際物流センター 中国・武漢の工場 ブラジル アルゼンチン 国際物流センター長のジャ ン・ピエール・ゴーティエ氏 49 JUNE 2006 〇〇トン。
そして荷受けの二四時間後、つま り、工場で部品を使ってから四八時間後には、 ル・アーブルのセンターでの出荷準備が整う。
残りの二〇%についても、五日以内にすべて 準備が整う。
センター内の作業については、部品ごとに 作業マニュアルを用意し、標準の作業時間を 決めている。
九〇〇〇種類ある部品のうち半 数はメーカーがすでに着地別に仕分けして梱 包してくるため、それらの部品についてはト ラックから海上コンテナへの積み替え作業だ けで済む。
作業時間は二分と短い 。
あとは部 品の大きさや作業工程を勘案して四分から六 〇分の作業時間を設定して、従業員のノルマ としている。
現場の従業員三六〇人は、全員 ジェフコの正社員で、物量に合わせてシフト を組んで勤務している。
流通加工の後、工場の納入指定場所ごとに 仕分けして出荷する(例えば中国・武漢には 隣接するエンジン工場とアセンブリ工場の二 工場があり、納入指定場所は合計十二カ所あ る)。
一日平均で四〇TEU(二〇フィート コンテナ換算)を、一〇キロ離れ た港まで横 持ち輸送する。
「このセンターの稼働で、海外の工場へのリードタイムが、従来に比べ一週間短くなった。
今後もますます調達・国際物流に磨きをかけ て、外販獲得のノウハウを積み重ねていきた い」(ゴーティエ・センター長) 年間一六万台の完成車を輸出 ル・アーブルには、ジェフコの物流施設が もう一つある。
港に隣接するかたちでジェフコの完成車輸 送の輸出ターミナルが広がる。
事務所を含む 敷地面積は三〇ヘクタールで、一万五〇〇〇 台の完成車を保管することが可能だ。
輸出ターミナルのウーゴ・オグデン所長は 次のように話す。
「このターミナルからは、二〇〇四年に一二 万台、二〇〇五年には一六万台を輸出した。
十一カ所あるジェフコの輸出ターミナルとし ては二番目の規模で、ジェフコの輸出車両の うち一三%を取り扱う。
輸出国は、南米やア フリカ、ア ジアなどの八九カ国となる。
輸出 の九〇%はプジョーシトロエンの車で、残り は他社の完成車だ」 二〇〇二年までは同じ地域にありながら、 ターミナルが三つのゾーンに分かれており、事 務所も別の場所にあったため、効率が悪かっ た。
それを一カ所に集約して、事務所も移動 した。
敷地面積もそれまでの一四ヘクタール から二倍強にまで拡大した。
このターミナルにはヨーロッパ全土の工場 から完成車が運ばれてきて、方面別の船に乗 せて輸出する。
完成車がターミナルに滞留す る日数 は、最短で二日、最長で一カ月、平均 すると一週間になるという。
事務職員を含め た従業員は二八人で、そのうち?ジョッキ ー〞と呼ばれるドライバー九人が、完成車を 船に積み込んでいる。
繁忙期は夏場と年末で、スペースの七〇% が埋まる。
一方、閑散期は一月で、使うスペースは四〇%ほど。
ターミナルの一角には、外 販専用のスペースがあり、トヨタ自動車やフ ォード、韓国の現代自動車などの完成車が見 えるが、その台数はわずかだ。
オグデン所長 は「輸出ターミナルの課題は、 今後どうやって外販を増やしていくかだ。
こ のターミナルでは、各国の販売店の要望を聞 いて、ボディーショップでやるような販売直 前の手直しをここで行い、販売店は売ること に専念できるようなサービスを開始した。
客 先からの評判は上々で、これからも新しいサ ービスを付け加えていきたい」と意気込んで いる。
( 本誌欧州特派員 横田増生 ) 図4 ジェフコ=Gefco 会社略歴 本社 設立 CEO ネットワーク 従業員数 売上高 親会社 フランス パリ 1950年 ルイ・デフリン 80ヵ国 400カ所 9372人 30億ユーロ (4200億円=2005年12月決算) PSAプジョー・シトロエン 輸出ターミナルのウーゴ・オ グデン所長

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