ロジビズ :月刊ロジスティックビジネス
ロジスティクス・ビジネスはロジスティクス業界の専門雑誌です。
2005年6号
特集
ホントの物流IT 3PL案件の早期立ち上げ図る

*下記はPDFよりテキストを抽出したデータです。閲覧はPDFをご覧下さい。

JUNE 2005 16 システム部門の営業機能を重視 二〇〇五年三月期、日本梱包運輸倉庫(日梱)は 連結売上高一二四〇億円(前年比五%増)、経常利益 一一五億円(同二〇%増)の増収増益を達成した。
主 要荷主とする本田技研工業が海外事業を拡大させて いるのを受けて、輸出梱包業務や米国子会社の売り 上げが伸びている。
同社の創業は一九五三年。
老舗の路線業者(特別 積み合わせ運送事業者)に比肩する社歴と規模を誇 るが、その業務内容は有力陸運業者としては異彩を 放っている。
路線便ネットワークの拡充に主眼を置い てきた他の有力業者をよそに、長らく区域業者(一般 業者)の免許のまま、梱包を始めとした流通加工をベ ースに業務範囲と事業を拡大させてきた。
「もともと当社には自分たちが運送業者や倉庫業者 だという意識自体がなかった。
3PLという言葉が輸 入されるずっと以前から、当社は顧客に密着して荷主 の要望には何でも応えるという姿勢でやってきた。
実 際、顧客の生産ラインにまで入り込むような仕事が当 社には少なくない」と、杉山功情報管理部部長は説 明する。
そうした3PL案件を現在、一〇〇近く抱えてい る。
その全ての情報システムを同社の情報管理部がカ バーしている。
加えて最近の物流コンペではシステム 面での提案が必須になっているため、プレゼンテーシ ョンにも必ず部員が駆り出される。
同部に在籍するI T技術者は現在、一五人。
全員が常に複数の案件を 抱えて全国を飛び回っている状態だ。
同社に限らず、物流企業のシステム部門は従来、自 社システムの運営管理がメーンの仕事だった。
その後、 コンピュータのダウンサイジングにより基幹システム の管理の手間は格段に減った。
それに代わってシステ ム部門の新たなテーマとして浮上してきたのが3PL のための営業機能だ。
日梱でも二〇〇〇年頃から、シ ステム部門の位置付けを間接部門から営業部隊に変 更した。
そこで最大の課題とされたのがシステム開発期間の 短縮だった。
「3PLのコンペが終われば、荷主から は一日でも早く運用を開始したいと要請される。
しか し新規案件のシステム開発には通常、半年以上はかか る。
これを短縮することが営業的に大きな意味を持 つ」と杉山部長。
その突破口としてWMSのパッケー ジソフトに目を付けた。
パッケージの購入価格を考えれば、最初の開発段階 ではむしろ手作りするより高くつく。
しかし、その後 に発生する業務プロセスの変更によるプログラムの修 正やバージョンアップの手間まで含めれば、パッケー ジのほうが有利である可能性が高い。
何より手間と時 間がかからないと踏んだ。
それまで新規案件のシステム構築は、よほど大規模 なものでない限り、社内でプログラムを組んでいた。
顧客別に一つひとつ組んだシステムは、基本的には変 わらない機能を持ちながら、どれも少しずつ仕様が違 う。
しかも部員の手作りであるため、設計した本人以 外、後からプログラムを変更するのが容易ではない。
汎用性に欠けていた。
3PL案件は毎年増加する一方で、事業の回転も スピードを増している。
従来通りの手作りを続けてい たのでは、とても追いつかない。
そこでコアになる部 分はしっかりしたソフトを予め用意して、データの入 口と出口だけを顧客に応じてカスタマイズする体制に 変更し、システム開発の生産性を上げようという発想 だった。
Case Study《WMS》――日本梱包運輸倉庫 3PL案件の早期立ち上げ図る マンハッタン・アソシエイツのWMSパッケージを導入 した。
狙いは3PL案件の早期立ち上げ。
これまで新規案件 のシステム構築には半年かかることも珍しくなかった。
手 作りを改め、パッケージを活用することで運用開始までの 期間を半分以下に短縮できるようになった。
(大矢昌浩) 第3部WMS とICタグの導入事例 17 JUNE 2005 日本で入手できるWMSパッケージのスペックを全 て並べて比較してみた。
まず動作環境や開発言語の点 で条件と合わないものは排除した。
具体的には同社の スタッフが馴染んでいるIBMの「iSeries 」上で動く ことを条件にした。
そしてコスト。
3PLの新規案件 が増えるごとに導入数も増えていくことを前提にトー タルコストを検討した。
最終的には米国系の大手ベンダー、マンハッタン・ アソシエイツの『WM for iSeries 』の導入を決めた。
iSeries 用に開発されたWMSで、パッケージの値段自 体は他社製品より若干高いものの、その後の開発工 数や、導入拠点を増やした時のライセンス負担が少な いことなどを評価した。
外資系のパッケージに対する懸念はあった。
事実、 日本の物流の実情とは合わない部分も少なくなかった。
「それでも日系ベンダーのWMSは導入時の作り込み が多く、荷主企業向けという印象を受けた。
それに対 してマンハッタンのWMSは汎用性が高く、3PLと して複数の荷主に対応するのには合っていると判断し た」と杉山部長はいう。
システム開発期間を半減 導入第一号案件はファッション小物などの雑貨類 を扱う埼玉県の児玉営業所だった。
延べ床面積約一 万一五〇〇平方メートル。
約三〇〇〇アイテムの多 頻度小口物流を処理している。
新規に獲得した案件 ではない。
荷主の販売管理システムをそのまま日梱が 倉庫運営に利用していたが、システム上の理論在庫と 実棚との乖離が大きく、誤出荷の低減が課題になって いた。
解決策としては児玉営業所に別途、物流管理用の システムを立ち上げて、そこから実棚データを荷主の 販売管理システムに提供する形にすればいい。
しかし、 「従来のような手作りでは半年以上は間違いなくかか る」と導入を担当した情報管理部管理課の青木丈昌 主任。
そこを二〇〇四年四月五日のキックオフミーテ ィングから約三カ月後の七月十二日にはカットオーバ ーすることができた。
児玉営業所の物流管理に必要な機能のほとんどは WMSパッケージのモジュールとして既に用意されて いた。
そのなかから適切な機能を選択して設定するこ とで、システムの基本的な枠組みはできあがる。
パッ ケージにない機能だけを作り込めば済むため、開発の 工数が格段に減った。
結果として開発期間が半減し た。
導入効果も期待通り。
理論在庫と実棚の乖離がな くなったことで、誤出荷の原因が明確になった。
改善 課題を荷主と日梱の双方で共有できるようになり、誤 出荷の発生率は大きく下がった(図1)。
オペレーシ ョンの効率や棚卸の手間も大幅に改善された。
導入二号案件は大手機械メーカーの物流を処理す る岡山営業所。
製品の一つひとつに個別番号を振っ た機番の管理が求められる。
全くの新規案件だったが、 これも二カ月を経ずにシステムを立ち上げることがで きた。
「児玉営業所への導入を経験して、パッケージ に慣れた分だけ早く導入できた」と青木主任はいう。
現在は第三拠点目の導入に取りかかっている。
マ ンハッタン・アソシエイツ日本支社のアーノルド・コ ンセンコ社長は「今や当社からのサポートはメールと 電話によるQ&Aにとどまっている。
自社内にノウハ ウを蓄積されて、迅速で幅広いシステム対応を可能 にされたことで、より一層、当社のWMSを新規荷 主獲得のツールとして活用してもらえると考えてい る」という。
品番 カラー 数量 サイズ 梱包 誤送 他現 値札 納伝 タグ 他事 9 8 7 6 5 4 3 2 1 0 導入前 導入後 9 5 6 0 2 7 2 9 1 1 1 3 0 3 0 3 4 2 4 5 0 1 図1 原因別クレーム発生件数 児玉営業所では約3000アイテ ムの多頻度小口化した物流を処 理している ●誤出荷の原因が明確になるクレームは激減した 情報管理部の 杉山功部長 情報管理部管理課の 青木丈昌主任

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