ロジビズ :月刊ロジスティックビジネス
ロジスティクス・ビジネスはロジスティクス業界の専門雑誌です。
2006年3号
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トランコム

*下記はPDFよりテキストを抽出したデータです。閲覧はPDFをご覧下さい。

MARCH 2006 40 共同配送から3PLに トランコムは一九五九年に「ナゴヤトラン スポートセンター」として設立され、八九年 に「トランコム」に商号変更した。
九五年に 東証二部上場を果たし、「共同配送のトラン コム」として注目を集めた。
現在(〇五年三月期)の事業構成は「貨 物運送事業」が一九%、「物流情報サービス 事業」が四七%、「ロジスティクスマネジメ ント事業(3PL事業)」が二八%、「アウト ソーシング事業」が三%、「自動車整備事業」 が二%。
ROAは七%、ROEは一六%で、 資産および資本効率は業界平均を上回る水 準を確保している。
同社の事業特性を挙げる とすれば、付加価 値の高い「3PL事業」に加え、「物流情報 サービス事業」で独自の求車求貨サービスを 提供している点であろう。
求車求貨サービス とはトラックの空車情報と輸送業者が確定し ない貨物の情報をマッチングすることで、手 数料収入を得るビジネスである。
同事業の収 入は〇四年三月期が約一四〇億円、〇五年 三月期が約一九五億円。
間もなく終了する 〇六年三月期には約二三五億円を見込むな ど急成長を遂げている。
「3PL事業」は九〇年代後半に本格的にス タートした。
現状では収入が一三〇億円程度 で同業他社と比較するとやや小さいが、利益 成長の余地は大きい。
その理由は同社がこれ までに立ち上げた3PL案件を見るかぎり、 同社と顧客企業との関係が旧来型のトラック 運送会社でみられるような「下請 け的なパー トナー関係」ではなく、同社が顧客にとって の「物流戦略上の重要なパートナー」、つま りWin―Winの取引関係を構築している と考えられるからである。
同社の物流コンサルティング能力やコスト 削減能力が顧客に高く評価されているため、 このような関係を築くことができた。
今後は こうした3PLでの実績やノウハウをアピー ルすることで、関東や関西エリアにおいて新 規顧客の獲得が進む可能性がある。
同社は長期ビジョンとして「物流オペレー ション・エクセレンスの確立、物流カバレッ ジの強化によって日本を代表する物流企業を目指す」こと、業績目標としては「売上高一 〇〇〇億円、営業利益六〇億円の達成」を 掲げている。
エリア別では売上高目標のブレ ークダウンを営業基盤の中部圏で四〇〇億 円、関東圏で三〇〇億円、関西圏で二〇〇 億円、その他エリアで一〇〇億円としており、 とりわけ関東圏および関西圏での営業拡大に 力を注いで いる。
物流オペレーション・エクセレンスとは物 流の実務部分を高度化することを意味し、具 体的にはIT活用や物流KPIの導入を積 極化する。
一方、物流カバレッジの強化策と しては調達→生産→幹線輸送→支線配送と いう具合に、トータルな国内物流サービスを 第19回 トランコム センター運営を柱とする3PL事業や、求 貨求車事業が好調で業績の拡大が続く。
若手 幹部がスピーディーな経営判断で各事業部を 切り盛りしている様子が株式市場から高く評 価されている。
ここ数年に立ち上げた大型セ ンターが安定稼働に漕ぎ着けることから、来 期の業績見通しは明るい。
土谷康仁 メリルリンチ日本証券  アナリスト 今期は業績が踊り場を迎えているが 来期は再び成長トレンドを取り戻す 41 MARCH 2006 手掛ける。
トータル物流では生産物流をロジ スティクスマネジメント事業部が、幹線輸送 を物流サービス事業部が、調達・支線配送 など細かな輸送サービスを貨物運送事業部が それぞれ担当しており、部門間のシナジー効 果を追求していく計画である。
同社では比較的若手の経営幹部による責 任体制を確立しており、各事業部のスピーデ ィーかつ柔軟な経営判断を見込める。
長期ビ ジョンと同時に示した二〇〇八年三月期を 最終年度とする中期経営計画では、売上高 六四〇億円(二〇〇六年三月期の会社計画 は四六九億円、同期比三六%増)、営業利益 三三億円(同二三億円、同四三%増)の達 成が目標であ る。
労働生産性を測る尺度であ る営業利益 率の計画は、 貨物運送事 業 で 七 ・ 〇%、物流 情報サービ ス 事 業 で 三 ・ 三 % 、 ロジスティ クスマネジ メント事業 で六・八%、 アウトソー シング事業 で五・〇% と、現状よ りもやや高 い水準をターゲットにしている。
M&Aに前向きな姿勢 この計画についてメリルリンチ日本証券が 注目しているのは今後三年間の設備投資を 五〇〜八〇億円程度と従来以上に拡大させ る計画を持っている点、さらに同社がM&A (企業の合併および買収)や業務提携投資を 能動的に考えている点である。
同社では従来 から無借金に近い経営を続けており、現状の デッド・エクイティレシオ(有利子負債/株 主資本、二〇〇六年三月期予想)も一倍以 下の水準である。
今後は財務レバレッジを活 用した柔軟な設備投資を検討しており、エリ ア拡大による3PLビジネスのさらなる利益 成長が期待できる。
ま た近年の物流業界では物流子会社の再 編などを契機としたM&Aが増加している。
同社が仮に関東や関西などの戦略エリアにお いて財務体質の良い企業の買収を実施した 場合、中期的な利益成長がさらに加速するだ ろう。
同社の直近の業績(二〇〇六年三月期上 期)は売上高二二九億円(前期比一七%増、 計画比プラス六・八億円)、営業利益十一億 円(同五%増、同プラス〇・九億円)、当期 利益六億円(同四%増、同プラス〇・七億 円)だった。
上期は「ロジスティクス・マネ ジメント事業 」において大型案件立ち上げに 関わる初期コストや、「物流情報サービス事 業」での採用拡大に伴う人件費増加などがあ ったため、営業増益率は従来のトレンドを下 回った。
しかし、下期は当該大型案件の本格 稼働や、前期に受託した3PL案件の収益 貢献が見込めるため、会社の通期の業績計 画は達成が可能だろう。
二〇〇六年三月期は一時的な業績の踊り 場になることが想定されるが、二〇〇七年三 月期は再び従来の成長トレンドを取り戻すと 考えられる。
来期(二〇〇七年三月期)業 績で は、?「物流情報サービス事業」におい て人材採用や店舗出店の一巡によって増収 ペースが鈍化すると考えられるが、従業員一 人当たりの生産性向上を通じた営業利益率 の改善が進むと予想されること、?二〇〇五 年に立ち上げた大型物流センターの通期稼働 が収益貢献することなどに加え、?名古屋市 内に新設予定の大型物流センターにおいて新 規需要の獲得が進むかどうか――などが注目 される。
メリルリンチ日本証券では同社の二〇〇七 年三月期の業績予想を売上高五一一億円(前 期比九%増)、営業利益二八億円(同二一% 増)、 経常利益二八億円(同二〇%増)、当 期利益一六億円(同一九%増)と予想して いる。
トランコムの過去5年間の株価推移 つちや やすひと 九七年三 月神戸大学大学院卒。
九八年 四月和光証券入社。
その後、 三菱証券などを経て、二〇〇 五年一〇月にメリルリンチ日 本証券に入社。
運輸セクター 担当のアナリストとして活躍 中。
著者プロフィール (円)

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