ロジビズ :月刊ロジスティックビジネス
ロジスティクス・ビジネスはロジスティクス業界の専門雑誌です。
2006年2号
特集
物流企業番付 平成18年版 菱光ロジスティクス

*下記はPDFよりテキストを抽出したデータです。閲覧はPDFをご覧下さい。

FEBRUARY 2006 24 オフィスビルを売却し物流事業に特化 ――二〇〇五年三月期は、保有していたJALビル (日本航空・天王洲本社ビル)を期中に売却したこと が当期利益を八〇億円に押し上げました。
八〇億円 のうち不動産の売却益はどの程度ですか。
「九割以上がJALビルの売却益です」 ――特殊要因を除外しても、売上高一五五億円に対 して、経常利益が十一・九億円(利益率七・六%)と 高い収益率を確保しています。
強さの理由は? 「二つ理由があると思います。
一つは、当社には恵 まれた不動産がある。
とくに二〇〇四年度は、まだJ ALビルの不動産収入がありました。
五〇年間かけて 事業をやってきた我々には圧縮 された資産があり、ポ イントはこれを有効活用できるかどうかなんです」 「二つ目は、単に荷物を預かるだけでなく、流通加 工などを含めて荷物を動かすことに取り組んできたの が大きい。
これはアパレル部門を中心とする話ですが、 当初はかなり苦労して赤字を出しながらやっていた。
それを四、五年かけて勉強し、ようやく利益を出せる ようになってきました」 ――JALビルの売却に踏みきった理由は? 「物流事業に特化するためです。
過去の当社は、収 益のかなりの部分を不動産事業に頼っていました。
二 〇〇一年の段階では 、物流事業の赤字を不動産事業 で埋めるという構図になっていた。
しかし、これでは 物流会社としてはダメです。
そこで現場のコストダウ ンなどを図り、当時は販管費だけでも四億円くらいカ ットしました。
その結果、自社開発の倉庫でも収益を 上げられるようになったんです」 ――物流事業への特化は、この四月に御社がエム・シ ー・トランスインターナショナル(MCトランス)と 合併して「三菱商事ロジスティクス」へと生まれ変わ るためのステップと理解していいのでしょうか。
「それも大きかったのですが、米国会計基準の話が ありました。
これが適用されたら、保有するオフィス ビルの相場が下がるリスクを我々が抱え込むことにな ってしまう。
もちろん、それが本業であればいいので すが、物流事業をや っている会社が、そうしたファク ターを持っているというのは非常に分かりにくい。
こ のような将来リスクを切り落としながら、その部分を 物流資産に置き換えていくということです」 新会社のターゲットとなる事業 ――今年四月というタイミングで合併する狙いは? 「これまで菱光ロジスティクスは、もっぱら国内の 倉庫事業を手掛けてきました。
一方、MCトランスは 国際関係のフォワーディングとかNVOCCをやって きた。
しかし、お客様の立場からすると、これだけを やっていればいいわけではない。
たとえば中国では現 場まで持って物流をやる必要があります。
シンガポー ルやマニラなどで三菱商事が事業交渉をやるときには、 MCトランスの名前でやってきたことも多い。
こうし たケースでは人が足りないため、菱光ロジスティクス から出向したりしてきた長い歴史があるんです」 ――近年は菱光ロジが青島(中国山東省)に自社倉 庫を構えるなど役割分担が不明瞭になっています。
「だからこそ、改めて整理することになりました。
私 が二〇〇三年に三菱商事で物流ユニットマネージャー だったとき、このミッションを与えられて、再構築も 含めて切り分けをどうするかを検討しました」 「お客様のニーズからすると、海外で作った製品を 日本に持ってくるとか、あるいは海外で値札付けまで して輸入し、そのまま日本全国にバッと流すといった 今年4月、同じ三菱商事系列のエム・シー・トラ ンスインターナショナル(総合22位)と合併して 「三菱商事ロジスティクス」に生まれ変わる。
すで に合併2社の社長を兼務しており、新会社トップへ の就任も決まっている若松紀久雄社長に今後の方 針などを聞いた。
(聞き手・岡山宏之) 注目企業トップが語る強さの秘訣 菱光ロジスティクス ――SPA物流で強み持つ三菱商事の子会社 総合4位 総合7位 総合11位 総合15位 若松紀久雄 社長 「商社系ならではの 事業をめざす」 25 FEBRUARY 2006 話がいずれ出てきます。
このようなニーズにワンスト ップ・ショッピング的に対応するにしても、物流ソリ ューションの提案をするにしても、各社が別々に動い ているとお客様から見て非常に分かりにくい。
三菱商 事にとっては使いにくいし、従業員も動きにくい。
各 社がバッティングすることだって起こりうる。
やはり 一本化する必要がありました」 ――菱光ロジはSPA(製造小売業)に強い。
統合は この分野の荷主へのアピールにもなりますね。
「SPAの分野でカギになるのは情報です。
お客様 からオーダーをいただく前に、現場の作業者の数など を読まなければいけない。
我々も経験を重ねて、ある 程 度までは予測できるようになってきました。
しかし、 全体の流れをきちっとつかみ、お客様と情報を共有で きれば、もっとスムーズな業務が可能になるはずです。
最小限の在庫ロスで、チャンスロスも抑えながら、オ ペレーションのコスト削減も図れるはずです」 「現場作業の効率化には限界があります。
やはり情 報に基づいてデータ分析を行い、売上予測のような数 値をある程度まで共有することで、サプライチェー ン・マネジメントを高度化していくべきです。
全体を 一緒に考えさせていただき、我々はそのなかのエグゼ キューション(実行)の部分で貢献する。
そこでプロ フィット・シェアリングができる存在にまで自分たち を高められるか。
これを徹底してやっていきます」 ――合併相手のMC トランスの得意分野は? 「一つは自動車関連です。
たとえば、ある日系自動 車メーカーのタイの工場では複合的な業務を手掛けて います。
部品メーカーからミルクランで集荷し、別に 管理している輸入パーツと合わせて、工場の生産ライ ンまで供給する物流管理をやっています。
また、完成 車を港に運び、カーポートで管理したり、そこから輸 出する輸送手段の計画立案もやっている。
?自動車 物流のフルライン〞と呼んでいますが、四月以後はこ ういった事業も積極的に手掛けていきます」 日本通運や日立物流はめざさない ――新会社の役割としては、三菱商事の商流をバック アップすることがメーンになるのでしょうか。
「バックアップというより、むしろ三菱商事を使っ て成長するというのが『三菱商事ロジスティクス』と 名付けた最大の狙いです。
物流業界をカバーできる商 社的な事業モデルを実現したい。
我々はミニ日本通運 もミニ日立物流もめざすものではありません。
商社系 という特性を最大限に活かし、新しい物流事業モデル を確立していきます。
それこそ我々が生き残り、成長 していくためのかたちだと思っています」 ――具体的にはどんな事業モデルですか。
「三菱商事の得意分野の一つは金融です。
この機能 を活かして、先行して走っているのが物流REIT ( 不動産投資信託)です。
これを我々の事業ポートフ ォリオの一つにします。
すべてのファンドマネジメン トをやるのではなく、お客様への紹介だとか、買い上 げる資産の見立てなどをやる。
すでに当社から人材を 派遣して分析作業などを手掛けています」 ――物流事業への特化という考え方に反するのでは? 「不動産のぐるぐる回しはやりません。
ニーズに合 わせて良い土地を開発し、そこに信用力のあるお客様 をつけ、それを一つの事業モデルとして投資家に販売 する。
そういった仕込みをやります。
周囲にそういう ニーズを持つ方々が沢山いて、情報もあるのだから、 それをお金に換える方法を考えてもいい。
上手くい く かどうかは分かりませんが、事業モデルとしては、そ ういったものまで内包させていくつもりです」 特集 《平成18年版》 売上規模 100 80 60 40 20 0 利益伸び率 利益規模 売上高 伸び率 1人当たり 収益 累積 利益率 【業績】菱光ロジスティクス 【企業概要】 (単位:百万円) 売上高 利益 解 説  菱光ロジスティクスが今回、売上高横這いにも かかわらず総合15位にランクインしたのは、保有し ていた不動産(JALビル)を2005年3月期に売却 し当期利益80億円を計上したため。
ただし同期の 経常利益11.9億円を確保している有力企業でも ある。
三菱商事グループの物流会社として主に国 内業務を担当し、ファーストリテイリング(ユニクロ) やファイブフォックスといった有力SPA(製造小売業) の物流業務を受託。
当初は赤字続きだったのを 主力事業に育てあげた。
 今年4月、同じ三菱商事系列で国際物流を担当 しているエム・シー・トランスインターナショナル(総 合22位)と合併し、「三菱商事ロジスティクス」とし て再出発する。
新会社の事業規模は伊藤忠商事 系列のアイ・ロジスティクス(総合56位)に匹敵し、 商社系物流業者としてはトップクラスに躍り出る。
2010年に経常利益50億円という目標を掲げている。
上場をめざす予定は当面ない。
■設立―1954年(三菱商事の倉庫部門が 分社化) ■資本金―7.1億円 ■従業員 ―135人 ■株主―三菱商事79%、エム・ シー・トランスインターナショナル21% ■営 業種目―物流部門(倉庫・保管・流通加工) 72%、リース部門16%、不動産賃貸11%  ■主要販売先―三菱商事、理研ビタミン、フ ァーストリテイリング、ファイブフォックスほか 03.03 16,707 475 04.03 15,259 622 05.03 15,516 8,029 【業績】エム・シー・トランスインターナショナル 売上高 利益 02.12 27,588 291 03.12 27,562 1,251 04.12 29,320 1,143 菱光ロジ MCトランス

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