ロジビズ :月刊ロジスティックビジネス
ロジスティクス・ビジネスはロジスティクス業界の専門雑誌です。
2006年2号
現場改善
61.114.238.11

*下記はPDFよりテキストを抽出したデータです。閲覧はPDFをご覧下さい。

59 FEBRUARY 2006 事例で学ぶ 現場改善 日本ロジファクトリー 青木正一 代表 経営破綻からの再生 東北地方を地盤とする年商三〇〇億円のK社 は、本連載二〇〇四年八月号でも紹介した物流 会社である。
前回は同社が巨額の負債を抱えて 経営破綻し、投資会社の管理下で再建に取り組 む様子を紹介した。
その後、K社は見事な再生 を果たした。
今や黒字企業として近い将来の株 式公開も視野に入ってきた。
そのK社から改めて問い合わせが入った。
前 回のコンサルティングで我々、日本ロジファク トリー(NLF)との交渉窓口を務め てくれた M氏からであった。
「おたくからのセミナーの案 内を見て、ウチの社長が是非社員に受けさせた いと言っている」とのことであった。
セミナーとは、NLFが本年開講する「物流 実務カレッジ」の「3PLプロフェッショナル マネージャーコース」のことである。
M氏の話を 聞いて正直、私は「K社に3PLはまだ早いの ではないか。
もっと現場管理職や営業担当者の 教育をしなければならないレベルではないか」と 疑問に感じた。
しかしその後、K社のY社長やS常務の話を 聞いていくうち、物流品質の向上を高め、市場 環境に適応していくには?井の中の蛙〞であ っ てはならないという強い危機感を持っているこ とが分かった。
苦難を乗り越えたK社は、今度 は強い会社づくりのための第一歩を踏み出そう としていた。
その目玉となるテーマが3PL企 業としての成長と発展であった。
K社からの参加は一五人に上ったため、我々 は別枠でK社単独の3PLプロフェッショナル マネージャーコースを設けることにした。
実務 研修のカリキュラム内容は表1の通りである。
こ うしてK社の3PL改革は実務研修と並行して 展開していくことになったのである。
第1回の研修内容は、第1部「NL Fにおけ る3PLの定義解説」、第2部「3PL担当者 に求められるスキル」、第3部「提案営業の進め方と効果的ツールの作成」、第4部「一括受託提 案の方法とポイント」、第5部「グループ別ワー キング」であった。
グループ別ワーキングでは、参加した一五人 を五人ずつの三つのグループに分け、それぞれ を仮想3PL会社として位置付けた。
各グルー プで相談して、自分たちの3PL会社の社名、主 な業務、対応エリア、営業拠点などを決定し、そ れぞれが目指す3PL会社のスペックを決めて いった。
こ のグループ別ワーキングは、単に講義を受 けるだけではなく、3PL会社を運営するため に必要となる、強みとする物流サービスや物流 インフラ、傭車ネットワークなどの体制につい 第37回 経営破綻から再生を果たした中堅物流会社K社。
次のステッ プは3PLへの業態革新だ。
そのために3PL事業の担い手と なる人材の育成に着手した。
研修で得たスキルをすぐに実務で活 用する。
それを繰り返すことで、着実に改革を進めることができ た。
物流会社K社の3PL人材育成 FEBRUARY 2006 60 第1回研修を具体的な社内活動に、どう結びつ けたのか報告を受けた。
「前回の研修で物流ニー ズ、3PLマーケットが様々なところに転がっ ていることが認識できた。
これを受けて?白ナ ンバー〞をターゲットとした営業戦略を立案し、 具体的に動き出している」とのことであった。
白ナンバーとは、自社物流を行っている荷主 のことである。
営業用トラックのナンバープレー トが緑色であるのに対し、自家用トラックが白 であることからそう呼ばれる。
一般的に白ナン バーは食品や建築資材の卸、問屋や中小メーカ ーに多い。
これらの荷主にアウトソーシングの 提案 を行い、受託するというものである。
こうしたケースでは、業務とともに荷主の既 存スタッフと車両まで含めて3PL側で受け入 れることになる場合が多い。
それを3PL側か ら積極的に提案していくことで新規荷主を獲得 しようという戦略だ。
もともとK社は地場の食品卸を中心に営業を 展開していた。
それに対して私はターゲット企 業の見つけ方として、名簿などの活用はもちろ ん、もっと生きた情報収集も必要であることを 指摘した。
そして具体的な方法として、車両通 行量の多い主要幹線道路で定点調査を行い、会 社名 を拾い上げリスト化することを提示してい た。
私の提案をK社はすぐに実行に移していた。
第2回の研修は、第1部「物流管理指標作 成・運用による改善の着眼点」、第2部「コンサ ルティング活動の内容とその進め方?」、第3部 「コンサルティング活動の内容とその進め方?」、 第4部「3PL契約内容とそのポイント」、そし て第5部「グループ別ワーキング」という構成 て、参加者の知識を整理し、身につけていくこ とが狙いだった。
白ナンバーを狙え それから二週間後に、第2回研修を実施した。
開催の冒頭にプロジェクトリーダーのM氏から、 だ。
グループ別ワーキングは今回も仮想3PL会 社をベースにした。
それぞれ仮想荷主を設定。
ト ータル物流コストの削減やリードタイム短縮の シクミづくり、アウトソーシングなど、各仮想 荷主の要望を受けて提案書の作成に取りかかっ た。
初めて提案書を作成するという社員も多かっ た。
そのため提案書の「厚み」に怖じ気づくこ とのないよう、重点項目に絞り込んだ簡易版の 提案書を作成させることにした。
ハードルが高 すぎては落第者を出してしまう。
小さな成功 体 験を積み上げることで、参加者に自信を付けさ せなくてはいけないという配慮からだ。
さらに二週間後。
第3回研修の開催冒頭に再 びM氏から活動報告を受けた。
今回は大きな動 きが二つあった。
一つは日本郵政公社とのタイ アップが実現できそうであるということ。
そして もう一つは既存荷主の電機メーカーに庫内作業 効率化のための物流改善提案書を提出したとい うことだった。
この提案書は先方の意に留まり、K社と共同 で現場改善をすることになったという。
具体的 には出荷頻度のABC分析を行うことで在庫の ロケーションを変更し、狭い庫 内を有効に活用 しようという内容であった。
このように毎回、活 動の成果を聞くことは、私自身にも大きな励み になった。
ますます研修に力が入っていった。
物流コンペのタブー 第3回研修は、第1部「3PL運営における コストダウンの方法」、第2部「物流改善の手法 第1部 第2部 第3部 第4部 第5部 9:00〜10:30 10:30〜12:00 13:00〜14:30 14:45〜16:15 16:15〜17:45 第1回 第2回 第3回 第4回 第5回 第6回 基礎編 応用編 実践A 実践B グループ別ワーキング NLFにおける3P Lの定義解説 物流管理指標 作成・ 運用による改善の 着眼点 3PL運営における コストダウンの方 法 パートナーシップ 構築の方法 3PL運営における 業務品質向上策 同業者ネットワー クの構築方法 3PL担当者に求め られるスキル コンサルティング 活動の内容とその 進め方? 流改善の手法とそ の進め方? 荷主情報開示提案 とその進め方 在庫管理の方法と 進め方 フリーアセットに よる物流インフラ の組立て方法 提案営業の進め方 と効果的ツールの 作成 コンサルティング 活動の内容とその 進め方? 物流改善の手法と その進め方? 3PLに必要な情報 システムとその機 能 3PLに必要なマテ ハンノウハウ? 物流遊休資産の対 処方法 一括受託提案の方 法とポイント 3PL契約内容とそ のポイント レイバーコントロ ールの方法 情報システム活用 にる業務の可視化 3PLに必要なマテ ハンノウハウ? 共通目標のあり方 と設定方法 仮想3PL会社を 設立し、その中で 荷主に対する提 案・交渉・運営な どをケーススタデ ィ・ロールプレイ ングを通して独立 性のある3PLサ ービスを構築して いきます。
グループ別ワーキング 質疑応答 ※ 表1 61 FEBRUARY 2006 な見方〞、?あいまいな逃げ口上〞などが多く見ら れる。
提案営業でもっともタブーとされるのが、 自社の都合を正当化してしまうことである。
提案書レベルでは一見、荷主の要望に応えた 内容となっていても、いざ踏み込んだ質問をす ると、つい自社の利益優先の本音が出てしまう ことが多い。
経験を積み重ねることが必要なの はもちろんだが、会社としても日頃から物流マ ンとしての引き出し、解決策をできるだけ多く 持つように社員を育成していなければ、多様化 かつ高度化する一方の荷主のニーズには対応 で きない。
第5回の研修内容は、第1部「3PL運営に おける業務品質向上策」、第2部「在庫管理の方 法と進め方」、第3部「3PLに必要なマテハン ノウハウ?」、第4部「3PLに必要なマテハン ノウハウ?」、第5部「グループ別ワーキング」 であった。
研修を実務に活かす 最終回となる第6回研修の開催前の活動報告 では、従来から取引関係のあった商社A社のオ フィスにK社の専用デスクを置くことになった、 つまり商社にK社のスタッフが常駐することが 決まったという報告を受けた。
商社A社は食品 物流に定評のあるK社のノウハウに注目し、共 同で営業活動と受託後のセンター運営や配送を 行うことになったのだという。
第6回研修の内容は、第1部「同業者ネット ワークの構築方法」、第2部「フリーアセットに よる物流インフラの組立て方法」、第3部「物流 遊休資産の対 処方法」、第4部「共通目標のあり とその進め方?」、第3部「物流改善の手法とそ の進め方?」、第4部「レイバーコントロールの 方法」、第5部「ロールプレイング」というカリ キュラムだ。
ロールプレイングではトータル物流コストの 算出作業を行った。
トータル物流コストの「人 件費」の項目では、大半のメンバーが算出ミス を犯した。
人件費=給与という思い込みが強く、 社員にかかる福利厚生費を加算していない参加 者が多かった。
ちなみに福利厚生費は一般に、平 均給与の十二%〜十三%ほどかかってくる。
こうした実作業を経験することで得られるも の は決して少なくない。
このロールプレイングで も、それまでなかなか研修についてこられなかっ たある社員が「こういう内訳になっているので すね」「実際、計算をしてみると面白い結果が出 ます」と、大きな関心を示してくれたのであっ た。
第4回研修は、第1部「パートナーシップ構 築の方法」、第2部「荷主情報開示提案とその進 め方」、第3部「3PLに必要な情報システムと その機能」、第4部「情報システム活用による業 務の可視化」、第5部「グループ別ワーキング」 という内容である。
このグループ別ワーキングでは第2回研修で 作成した提案書に修 正を加え、完成させた提案 書でプレゼンテーションを行った。
私が仮想荷 主の物流担当者となって、プレゼンテーション についての質問や確認などを行った。
総じて物流マンは人前で話をすることが苦手 である。
K社の社員も同様であった。
また、質 問に対する回答として?言い訳〞や?後ろ向き 方と設定方法」、そして第5部「グループ別ワー キング」である。
最後のグループ別ワーキングで は当コースのまとめとして、以下にタスクとその 進捗管理を記入し、実務研修終了後も引き続き 3PL改革の実践を進め ることを全員でコミッ トした。
一連の研修期間を通じて、K社の行動は常に 迅速であった。
その結果、実務研修→実践→実 務研修→実践というサイクルができあがり、研 修の時間対効果・費用対効果は格段に高まった。
研修は消化すれば良し、とする時代は終わった。
いかに会社に戻ってモノになるスキルを習得で きるか。
結果を出すことができるかが問われて いる。
その意味で研修を即座に実践し結果を出 したK社の取り組みは理想的なケースといえる。
K社の実践のなかには、3PLとは言えない ような展開も発生した。
しかし、それも3PL を経営ビジョンに掲げることがなければ得られなかった収穫である。
今や会社の目標、ビジョン に3PLを掲げ る物流企業は後を絶たない。
た だし、その成果は3PL事業そのものだとは限 らない。
3PL改革の醍醐味は、業態革新より もむしろそのプロセスにあるのかもしれない。
あおき・しょういち  1964年生まれ。
京都産 業大学経済学部卒業。
大手 運送業者のセールスドライ バーを経て、89年に船井 総合研究所入社。
物流開発 チーム・トラックチームチ ーフを務める。
96年、独立。
日本ロジファクトリーを設 立し代表に就任。
現在に至る。
HP:http://www.nlf.co.jp/ e-mail:info@nlf.co.jp

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