ロジビズ :月刊ロジスティックビジネス
ロジスティクス・ビジネスはロジスティクス業界の専門雑誌です。
2001年9号
特集
マテハン機器/トラック車両 ユーザー満足度調査 フル稼働時のトラブルを未然に防げ

*下記はPDFよりテキストを抽出したデータです。閲覧はPDFをご覧下さい。

SEPTEMBER 2001 28 一〇〇%稼働を想定して試運転 ――物流センターを構築する際に、御社のような外部 の専門家を利用するメリットは。
「当社は物流センターを計画して設計し、導入する ところまでのエンジニアリングを手掛けています。
ベ ンダー各社とさまざまな仕様を取り決め、施行までお 手伝いします。
さらに、我々の業務のもっとも大きな 特徴は、実際にセンターが稼働してから定着するまで のフォローをやっている点でしょうね。
私はこれをシ ステムの定着化とか監査と呼んでいます」 「具体的には、センターへの導入を完了したマテハ ン機器の試運転をするのですが、ただ動かすだけでは 意味がありません。
物流センターの計画というのは、 五年先ぐらいの物量を見込んで作っています。
稼働し たばかりは物量に余裕があるため、ほとんどトラブル は出ません。
問題は設備能力一〇〇%の負荷をかけ たときです。
つまり物量が増える何年後かに、情報シ ステムだとか、コンベヤの分岐だとか合流部分にトラ ブルが発生するかどうかを見極める必要があるんです。
そこまで考えてシミュレーションを組んで検査をする のが、我々が参画するメリットだと考えています」 ――マテハンメーカーに任せると、そこまではやって くれませんか。
「それは、やりませんよ。
メーカーにしてみれば、そ んな辛い話はありませんからね。
そのための施設です から嫌だとは言いませんが、メーカーの立場では、そ こまでやるか、という気持ちにはなるでしょうね。
実 際、そこまでやるケースはほとんどありません。
しか し、メーカーにとってもそれが契約条件ですから、協 力しないわけにはいかないはずです」 「日本の場合は、仮に稼働五年後にトラブルが起こ ったとしても、ユーザーが悪いのか、メーカーが悪い のかで裁判沙汰になることはほとんどありません。
こ れが米国ですと、メーカー側は能力が出ないのは運用 の問題だと主張し、ユーザー側は機械の能力の問題だ と言って、平気で一年ぐらい裁判をしています。
日本 人の常識ではそこまではできないだけに、トラブルの芽 を未然に摘み取ることの意味は大きいはずです」 日本のマテハンには技術革新がない ――日本の大手マテハンメーカーの経営が苦しい理由 を、どう分析しますか。
「日本のマテハンメーカーは、ある会社が新しいマ テハン機器を開発すると『じゃあ、うちも作ろう』と いう横並び意識が非常に強い。
何か良いシステムがで きると、どんどん同じような機械を作ってしまう。
マ ーケットの規模は決まっていますから当然、競争は激 しくなる。
需給バランスが崩れれば価格競争にならざ るを得ません。
ある意味でユーザーにとってはありが たい話ですが、メーカーにしてみれば自分で自分の首 を絞めるだけの話です。
その点、海外のマテハンメー カーというのは、ライバルが作ったシステムとは違う やり方を見つけようとする傾向が強い」 「もう一つあるのは、日本では最近一〇〜一五年ぐ らい、本当に革新的なマテハン機器というのが開発さ れていないんです。
私も含めて努力が足りないのかも しれませんが、技術革新がありません。
二〇年ぐらい 前と比較すると、著しく進歩しているんですがね」 ――もともと日本のマテハン機器というのは、海外メ ーカーの製品をライセンス契約して導入することから 始まったという話を聞いたことがあります。
「その通りです。
最初は海外の大手機器メーカーと 提携して、ライセンス契約を結んで日本に導入したと 「フル稼働時のトラブルを未然に防げ」 物流センターの深刻なトラブルは、設備がフル稼働する 数年後に発生するケースが多い。
これを未然に防ぐには、 稼働時に将来の計画物量を投入して検証する必要がある。
そうした作業の積み重ねが強い物流センターを作る。
その ためにも、将来の物量を的確に想定できる物流プロジェク トの存在が欠かせない。
オムニ相澤健吉代表 Part ? マテハン機器Interview 29 SEPTEMBER 2001 いう経緯があります。
その後、初期の機械を越えて日 本独自のものが生まれたかというと、あまりない」 「それでも今では日本のマテハンメーカーの技術レ ベルは、ハード面では世界でもトップクラスです。
た だし、運用となると海外の方が進んでいる。
例えば、 私は米国の物流センターでトラブルの発生状況を管理 するシステムを見たことがありますが、コンピュータ の画面上に精密な現場のレイアウトが再現されて、故 障箇所を即座に把握できるようになっている。
そうし た付加価値の高い施設が海外にはあります。
擬似的な システムは日本にもありますが、そこまで完成度の高 いものではありません」 業績見込みを物量に落とし込む ――物流センターを作るという方針が固まったら、ま ず何をすべきでしょうか。
「構築すべき物流センターのスペックを明確にするた めには、三年後なり五年後の経営状態を?物量〞に落 とし込む必要があります。
しかし、どんな会社でも、将 来の計画というのは金額ベースでしか持っていません。
業績を何%伸ばすとか、売り上げを何億円増やすとい う計画はあっても、具体的にどういう商品を売って計 画を達成するかというのを詰めるのは非常に難しい」 「過去の実績データもあるし、現状も把握できる。
し かし、将来を過去の延長線上で考えていいとは限りま せん。
むしろ多くの場合、延長線上にはないと考える 方が無難です。
となると、その物量をどう読むかとい うのが設計する側の大きなノウハウになります。
つま り、計画値をどう物量に落とし込むかというのが、最 初の関門になるわけです。
こうした判断を的確に下す には、物流部門だけではなく、全社的なプロジェクト による推進体制が不可欠です」 ――要件設定をできたとして、次はマテハンメーカー と直接折衝するのか、コンサルタントなど外部の人材 を使うのかを判断する必要がありますね。
「本来であれば、ユーザーがきちんと勉強しさえす れば外部の人間をプロジェクトに入れる必要はありま せん。
要は短期間に、システムの落とし穴に陥らない ようにセンターを稼働できるかどうかです。
しかし、 いきなり何も経験のない人間が勉強しても、現実問題 として難しい。
できるとしても非常に時間がかかって しまいます。
そういった場合には、外部の人材を活用 するというのが一つの選択肢になります」 ――実際に提案を求めるマテハンメーカーというのは、 どうやって選ぶのですか。
「実のところ従来であれば、いろいろなしがらみのな かで決まるケースが多かったんです。
しかし、経済合 理性を考えれば、各分野を代表するマテハンメーカー 上位数社に声をかけて、コンペを開くというのが有効 です。
その際、同じようなタイプのマテハン機器の納入実績を、メーカーに対して必ず確認すべきです。
そ して実際に既存ユーザーの導入事例を見学に行き、ユ ーザーの生の声を確認するというのが大切なポイント になります」 ――導入後のメンテナンス体制をどう見極めますか。
「これも既存ユーザーに聞くのが一番、確実でしょ うね。
あえて一〇年前に稼働したシステムを見にいく とかね。
一般にマテハン機器のメンテナンス契約には、 年間契約とスポット契約があります。
スポットだと忙 しいときに後回しにされかねませんが、年間契約は決 して安いものではない。
いずれにしても故障の少ない 機器を導入するというのが非常に重要になる。
これを 見極めるためにも、過去の納入実績というのが最大の 情報になるのです」 特集 マテハン機器/トラック車両 ユーザー満足度調査 A B C D E F A B C D E F 社内プロジェクト 社内プロジェクト + MHメーカー 社内プロジェクト + エンジニアリング会社 社内プロジェクト + ゼネコン 社内プロジェクト + 外部コンサルタント 社内プロジェクト + コンピューターメーカー 自動仕分システム デジタルピッキング 自動倉庫 ピッキング台車 フォークリフト パレットコンベヤ ケースコンベヤ パレットラック 中・軽量ラック 情報システム機器 垂直搬送機 回転ラック 事業化 検討 企画 提案 システム 監査 プロジェクト マネージメント トータル コスト 社内投入 工数 運営 支援 評価 項目 推進 体制 プロジェクト体制 ベンダー各社 ●物流センター計画の推進体制チェックリスト (あいざわ・けんきち)六六年東京 工専電気工学科卒業、同年トーヨ ーカネツ入社、物流エンジニアリ ング業務に携わる。
八五年オムニ 物流施設設計を設立し代表取締役 に就任、これまでにオートバックス、 カルビー、キリンビール、味の素、 合同酒精など数多くの物流センタ ーの構築に携わってきた。
PROFILE 出典:オムニ

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