ロジビズ :月刊ロジスティックビジネス
ロジスティクス・ビジネスはロジスティクス業界の専門雑誌です。
2001年9号
特集
マテハン機器/トラック車両 ユーザー満足度調査 最大の敵は社内にいる

*下記はPDFよりテキストを抽出したデータです。閲覧はPDFをご覧下さい。

SEPTEMBER 2001 24 物流部主導では必ず失敗する ――物流マンにとって、センターの建設や設計という のは大きなプレッシャーのかかる仕事です。
しかも、 そう何度も経験できることではないので、ノウハウが ない。
実際には、どこから手を着ければよいのでしょ うか。
「まず大事なのはセンターのコンセプトをきっちり決 めることです。
そのためには同業他社のセンターを見 学させてもらうのが一番いい」 ――コンセプトというと抽象的ですが。
「具体的に問題になるのは機能です。
どういう機能 をそのセンターに持たせるのかを最初に決める必要が ある。
流通全体に必要な機能のうち、どの機能をその センターで行うのかということです」 ――しかし、そうした機能の分担を決めるのは、必ず しも物流部門だけでは判断できませんね。
「それを物流部門だけで判断すると、まず失敗しま すね。
これまでの経験から、それはハッキリ言えます。
物流部門の担当役員は最高意志決定の権限を持って いない場合が多い。
それなのに判断してしまう。
その 結果、後で大きなトラブルになる。
逆にセンター建設 で成功している事例を見ると、いずれも社内の意志決 定機関が明確になっている。
端的に言えば、センター 建設が社長直轄になっている」 ――しかし、経営トップともなると他にも案件を抱え ていて、物流となるとどうしても後回しになりがちです。
「もちろん専属のプロジェクトは必要です。
それを 社長直轄にすればいい。
繰り返しになりますが、最高 意志決定機関をはっきりさせておけばいいわけです」 ――物流部主導だと、どのような問題が発生するので しょうか。
「物流部門というのは物流を扱いながらも常に商流 の補佐をするという前提に立たされています。
実態と して会社組織の中で常に一番下に位置している。
営 業の要請を物流部が聞くという構図ですね。
この時に 営業の無理を物流部門が聞き過ぎると、コストが跳ね 上がってしまう。
逆に営業の要請をあまりに排除すれ ば、センターがガチガチになってしまう。
このバラン スをとるには物流部門よりも上位に意志決定機関がな ければならない」 ――本来、裏方である物流がセンター機能を設計して も途中で営業から横やりが入るということですか。
「今日の環境で物流センターを作るということは、そ の会社が流通改革をしようとしていることに他なりま せん。
そして改革の最大の敵は常に社内にいます。
こ れは物流に限らず言えることです。
センターの機能設 定でも重要になるのは、顧客との関係でも仕入先でも なく、社内を調整することなんです。
ここがポイント です」出荷センターを司令塔に ――物流センターを新設したり統廃合したりする以前 の段階で、それを自分でやるべきか、それとも外部に 任せるべきかという判断もありますね。
「確かに小売業者や卸から、そういった相談をよく 受けます。
それに対して私は全てアウトソーシングす ることを進めています」 ――なぜですか。
「一〇年後、日本の流通が現在の環境にあるとは考 えられません。
必ず変化がある。
そうした時に固定さ れたガチガチのセンターを持っていたら身動きがとれ なくなる。
投資をすればセンター機能も簡単には変え られない」 「最大の敵は社内にいる」 物流センターにどのような機能を持たせるか。
サプライ チェーンに必要な物流機能をパートナーと、どう分担する のか。
ビジネスモデルの明確なビジョンなしに、マテハン 投資を意志決定することはできない。
しかし実際にはセオ リー無視が横行している。
IE 高田茂男代表 Part ? マテハン機器Interview 25 SEPTEMBER 2001 ――アウトソーシング先になるのは。
「基本的には運送業者です」 ――しかし、卸業と運送業の垣根はだんだんと低くな っています。
実際、卸と運送業者が直接ぶつかる場面 も多くなっている。
それなのに卸が運送業者に物流を 投げてしまったら、会社の存在意義を自ら放棄してし まうことにならないですか。
「確かにその問題は、今日の卸に常につきまとって います。
問題は卸業のように商流を握ってきたプレー ヤーがどれだけ商品の知識、チャネルの知識を持って いるかにかかっている。
運送業者には基本的に商品知 識はないわけです。
定温ならチルドだ冷凍だ、という 発想はあっても、その商品がどういうニーズの中で生 まれてきて、それが今後どういう形態で、デザインで、 単価で、展開されていくのかという知識がない。
そこ が勝負の分かれ目になる」 ――商品知識のない卸は、もはや生き残れない? 「卸業というのは仕事の九割以上が広い意味での物 流業務です。
しかし、その部分は物流業者のほうが優 れている」 ――一方、メーカーはどのような物流機能を持つべき なのでしょうか。
「メーカーの物流センターというのは基本的には出荷 センターです。
そこに本来、求められる機能とは生産 調整機能です。
出荷センターには、一番川下の情報が 入ってくる。
調達から生産までの全てをコントロール するための情報は物流センターが持っているのです。
ところが現在のメーカーのセンターは出荷機能を持つ だけに止まっている。
川下に向けて一方通行の視点し か持っていない」 「出荷センターは本来、会社の司令塔になるべきで す。
そうなっていないのは企業における物流の認識が 低いことの現れでしょう。
情報の源として物流をとら えると、みえてくる風景が全然変わってくる」 機能の分担は変化している ――物流軽視という割に日本の大手メーカーは過去に 物流インフラに巨額の投資を行ってきました。
「日本の場合、メーカーは商品を約束通り安全に届 けて、さらに食品であれば最終的に消費者の口に入る まで責任を持たなければならなかった。
本来そんなこ とができるはずがないんです。
小売りに納品してしま えば、メーカーの管理を離れるのが本当でしょう。
そ れなのにメーカーは全部自分でやろうとしてきたし、や ってきた。
日本特有の返品問題もそこに端を発してい る。
そうすることで、メーカーはチャネルを囲い込も うとしてきたわけです。
しかし、そんな考え方はもは や捨てたほうがいいと私は考えています。
サプライチ ェーンの末端までメーカーが管理する必要はない。
も はや囲い込みなどできなくなっている」――小売りが最近、専用の一括物流センターを作って いますよね。
あの動きをどう評価していますか。
「正解ではないと思います。
少なくともマクロ的に 見たときに必要かといえば答えは『No』です。
もっ とも、その小売りがセンターフィーで差額を取るため の仕組みとしては機能している。
その意味では『Ye s』ですが、それも結局は物流部と商品部の覇権争 いにしかならない。
物流でリベートをとれば、商流の リベートが減るだけです」 ――そういったサプライチェーン内の機能分担を見て いかないと、物流センターの建設もできないというこ とですね。
「その通りです。
しかも現在の流通は過渡期にあり ます。
決して簡単なことではありません」 特集 マテハン機器/トラック車両 ユーザー満足度調査 (たかだ・しげお)一九四九年、広 島県福山市生まれ。
卸業勤務を 経て物流コンサルタントとして独 立。
IEを設立して代表に就任。
川下の流通センター建設を数多く 手掛ける。
編著書に「物流同盟」 (東洋経済新報社)、「ロジスティ クス・プロジェクト」(プロスパー 企画)、などがある。
PROFILE

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