ロジビズ :月刊ロジスティックビジネス
ロジスティクス・ビジネスはロジスティクス業界の専門雑誌です。
2005年5号
特集
物流のプロになろう ロジスティクスのキャリアパターン調査

*下記はPDFよりテキストを抽出したデータです。閲覧はPDFをご覧下さい。

特集 31 MAY 2005 オハイオ州立大学のSCMリサーチ・グループ (SCRG)では、過去三四年間にわたりロジス ティクス/サプライチェーン上級管理者のキャリ アパターンに焦点を当てた調査を行ってきた。
この調査から得たデータは、ロジスティクスにおけ る現在および今後の流れをより理解を深めるため にも用いられている。
調査対象者は、全米ロジス ティクス管理協議会(CLM)に現在所属してい るアメリカのロジスティクス/サプライチェーン 上級管理者である。
二〇〇四年八月に実施した調 査では、六八四人にアンケート用紙を送付し、う ち七二人から締切日までに回答を得た。
ロジスティクス部門の組織形態 企業は通常、次の四つの方法から一つを選び、 ロジスティクスを会社組織の中に組み入れている。
?各部門の一部として、?独立したロジスティク ス部門として、?本社管理部門のスタッフとして、 ?部門横断的な組織として、というようにである。
図1は、回答者の企業がどのようにロジスティ クスを社内に位置付けているかを表している。
全 体の八%が独立したロジスティクス部を設け、十 一%が部門の一部としてロジスティクス業務を行 い、四九%の企業が本社管理部門の業務として機 能していると答えている。
そして、複数の部門や 人材の組み合わせによって横断的に機能させてい ると回答した企業の割合は三七%であった。
この複数部門の組み合わせによる横断的組織は 過去数年間、最も幅広く用いられている方法だ。
また本社管理部門としてロジスティクス部を設け るというアプローチも、その重要性を高めてきて いる。
一方で各部門の一部、もしくは独立した部 門として捉えるアプローチはあまり採用されなく なってきた。
二〇〇四年の調査でも、独立した部門として位 置付けする企業の数が減少する一方で、組織横断 的アプローチが多く採られるようになり、ロジス ティクスの組織体系のあり方という点で二位に位 置付けられた。
ロジスティクス管理職の肩書き 回答者の役職別の構成比率は、一九九七年以 降大きく変化してきている。
九七年の調査では、 部長が三八%、取締役が三〇%、副社長職につい ている人が三二%であった。
これに対して今年は、 部長が一七%、取締役が五一%、副社長が三二% であった。
回答者の部署別の構成比率も同様に変化してい る。
九七年の調査では、ロジスティクスに関わっ ていると答えた回答者よりも、物流に関わってい ロジスティクスのキャリアパターン調査 オハイオ州立大学SCMリサーチ・グループ 米オハイオ州立大学では過去30年以上にわたりロジスティ クス・マネジャーのキャリアパターンを定点観測している。
調査項目は学歴/職歴から業務範囲、報酬、コミュニケーシ ョンなどきわめて多岐にわたっている。
2004年に実施された 直近の調査結果を報告する。
*この記事は本誌が米CLM(現・CSCMP)の許可を得て 翻訳・再構成したものです。
図1 組織構造の主なパターン 本社管理部門内 49.2% 部門横断 36.5% 独立部門 7.9% 各部門の一部 11.1% その他 1% 米国調査 MAY 2005 32 ると答えた人のほうが多かった。
ところが九九年 の調査では、回答者の五二・三%がロジスティク ス、一四・六%が物流、十二・一%がSCMとい う結果になった。
SCMに関わっている回答者の 割合は、九九年と二〇〇三年の間で九%から二 五%まで増加した。
図2は、今回の調査の回答者の所属部門の割合 構成を示したものである。
ロジスティクスを主要 な所属部署として報告している回答者の割合は、 合計で母集団の四七%であった。
次に多かったの がサプライチェーン(一七%)で、その後にカス タマーサービス(一〇・五%)、物流(三・五%) という順番になる。
今回の調査で、カスタマーサ ービスは初めて二桁台に達し、物流が一桁台にま で低下した。
ロジスティクス企業(組織)の成熟度を測定す るために、企業が物流もしくはロジスティクス部 に上級管理者レベルの人材を最初に任命した時期 はいつ頃かという質問をした。
ここでの「上級」 職とは、副社長や本部長と定義した。
図3は、回答者が上級ロジスティクス管理者に 任命された時期の構成比率を示している。
この数 値から明らかなように、多くの企業が九〇年代の 一〇年間に上級ロジスティクス管理者の任命とい う意思決定を行っている。
ロジスティクス/サプ ライチェーンに関わる上級管理者の任命を肯定的 に捉えていると報告している回答者のほぼ半分が、 二〇〇一年より以前に任命を受けている。
業務領域と職務権限 ロジスティクス・マネジメントの対象領域を測 定するために、回答者に自分の責任範囲内の仕事 を特定し、それに対する職務権限の度合いと各仕 事に費やす時間を想定するようにお願いした。
十 二項目の一般的なロジスティクス業務をリストア ップし、リストに載ってない追加事項があれば、 それを書き加えることができるように依頼した。
全体の傾向(図4)は、過去五年間にわたって かなり安定している。
もっとも例外があり、国際 的ビジネス、注文処理/受注タスクは、九〇年台 に着実に伸びた。
また二〇〇四年には回答者の九 二%が、国際ロジスティクスに対して何らかの責 任を負うことになった。
七四年には八%の人が国 際ロジスティクスに対して責任を担っていただけ だった。
一般的に職能的責任の範囲は輸送業務か ら倉庫業務と広がり、二〇〇三年の調査までその 傾向が続いた。
各ロジスティクス・タスクに対する回答者の 「職務権限の度合い」は、図5に示した通りであ る。
また各タスクの処理時間は、図6に示した通 りである。
最も多くの時間(二〇%)は、一般管 理、倉庫業務、輸送管理に費やされている。
そし て最も大きな変化は、全体の三〇%に相当する時 間が国際ロジスティクス、一般管理および購買業 務に割り当てられるようになったことである。
年齢層と学歴 今年の調査では、五三歳から五七歳の年齢枠に 入るロジスティクス幹部の数が最も多く、全回答 者の二五%がこれに相当する。
図7では、年齢別 図2 回答者の所属組織 ロジスティクス SCM 顧客サービス 物流 その他 47.4% 17.5% 10.5% 3.5% 17.5% 85年以前 1986―1990 1991―1995 1996―2000 2001―2004 未選定 (%) 6% 10% 15% 29% 21% 19% 図3 上級ロジスティクス管理職の任命時期 0 5 10 15 20 25 30 35 図4 ロジスティクスの責任範囲 国際ロジスティクス 倉庫管理 輸送管理 在庫管理 一般事務管理 生産ロジスティクス 受注処理 顧客サービス 包装 調達 生産計画 販売予測 92% 92% 87% 84% 67% 64% 62% 54% 53% 39% 34% 27% 21% 工場/倉庫立地決定 特集 33 MAY 2005 にロジスティクス幹部の構成割合を示している。
年齢の中央値は二〇〇三年の四三歳が二〇〇四 年には三九歳と若くなった。
同様に、取締役の年 齢中央値は四八歳から四三歳まで下がった。
副社 長の場合は五三歳が五二歳になった。
図8で示されている通り、全回答者の八九%の 人が学士号をもち、修士号は六〇%、APICS といった組織団体からの認定書を持っている人は 一八%であった。
回答者の学歴は、ロジスティク スがますます専門性を帯びてきていることのさら なる証明となっている。
修士号を持つ回答者の割合は、図9に示されて いる通り過去数十年にわたり大きく変わってきた。
工学、IT、グローバルビジネスといった分野で の高学歴をもつ回答者のベースが広がってきてい るように見える。
学士号を取得している回答者の大半は経営学士 号を取得している。
全回答者のうち二三%が経営 学を専攻し、続いてロジスティクスが一六%、マーケティングが八%、その他の学問を専攻してい る人の割合は二七%である。
図 10 の円グラフを見て頂きたい。
マーケティン グ専攻者の割合(九九年の四%が二〇〇三年には 十二%へ)、並びにロジスティクス専攻者の割合が (九九年十一%から二〇〇三年十二%)、大きく増 加している。
ロジスティクスを専攻し、企業内で ロジスティクスに関わる取締役へとキャリアを積 んでいこうとしている新しい世代が誕生している ことを、このデータから読み取ることができる。
二〇〇二年に行った調査では、部長、取締役、 8% 14% 18% 29% 31% 39% 40% 52% 58% 66% 66% 68% 80% 11% 図5 職務制限 国際ロジスティクス 輸送管理 倉庫管理 一般事務管理 在庫管理 生産ロジスティクス 顧客サービス 調達 販売予測 受注処理 包装 生産計画 その他 工場/倉庫立地決定 直接管理 支援 15% 10% 10% 10% 10% 10% 10% 5% 5% 5% 5% 2% 2% 1% 図6 時間配分 輸送管理 国際ロジスティクス 倉庫管理 一般事務管理 顧客サービス 調達 工場/倉庫立地決定 在庫管理 生産ロジスティクス 受注処理 包装 生産計画 販売予測 その他 図7 ロジスティクス幹部の年齢層 27―32 33―37 38―42 43―47 48―52 53―57 58―68 (%) 1.6% 6.4% 20.6% 19.1% 15.9% 25.4% 10.5% 0 5 10 15 20 25 30 学士号 修士号 認 証 88.8% 60.32% 18.00% 図8 教育歴 1980 1985 1990 1997 2000 2002 2003 2004 (%) (年) 18% 51% 50% 21% 29% 20% 45% 17% 63% 18% 41% 46% 32% 41% 図9 高学歴者の傾向 修士号の46%はMBA(2004年) 修士号 認証 0 10 20 30 40 50 60 70 MAY 2005 34 副社長のロジスティクス業務における平均勤続年 数は、約一九年だった。
現在の会社には七年程勤 務しており、現在の役職についてから七年ほど経 過している。
図 11 は、役職別にみた、ロジスティ クス幹部の勤務経験年数の平均値を示している。
学習とコミュニケーション 今回の調査では一年間を通して学習およびコミ ュニケーションのために費やす日数を予測しても らうようにお願いした。
図 12 から分かる通り、部 長、取締役および副社長は、一月あたり半日から 一日をトレーニングのために割り当てている。
部 長や取締役に比べて副社長がパソコン(PC)業 務に充てる時間は少ない。
ロジスティクスおよびサプライチェーンに関わ っている全幹部は、一日に平均して七〇から八〇 通の電子メールを受け取る。
PCや電子メールの 利用や、インターネットへのアクセス状況を鑑み ると、平均してロジスティクスに関わっている幹 部は、移動中、オフィスにいる時も、そして自宅 にいる時でも電子的にコンタクトを取ることがで きることが分かる。
自由に選択したカリキュラムを勉強するために、 九〇日間にわたり改めて学校に通う可能性の有無 を質問したところ、次のような回答が返ってき た:SCM(二〇%):コンピューター/情報/ 研究(一七%):国際ビジネス/ロジスティクス (一七%)財務/会計(二〇%)。
また興味深いこ とに、二〇〇〇年の調査では一六%に達していた 電子商取引が二〇〇一年にはリスト項目からはず れ、二〇〇二年から二〇〇四年も引き続き項目か ら外れている(図 13 )。
ロジスティクス管理職の報酬 給与とボーナスを含めた幹部の報酬に関するデ ータは、図 14 の通りである。
部長、取締役および 副社長のボーナスを含めた平均給与は、それぞれ 一〇万三〇〇〇ドル、十二万四〇〇〇ドル、二三 万ドルである。
二〇〇三年時の給与と比較してみ ると、取締役の平均給与は減少したが、副社長の 平均給与は、二〇万ドルから三万ドル増加した。
平均給与が減少した原因としては、二〇〇四年 時の上級管理者のボーナスが減ったことが挙げら れるだろう。
副社長である回答者のうち四人は、 給与が四〇万ドル以上であると報告しており、そ のうちの一人は一〇〇万ドル以上と報告している のは、興味深いことである。
今後の方向性とトレンド 自由回答式質問法を使って意見を求めた。
今後 一〇年間で、企業のロジスティクス機能の成長と 発展に最も影響を及ぼすと考えられる要因を挙げ 図10 学士号の専攻 工学 9% マーケティング 8% その他 27% 人文学 17% 経営 23% ロジスティクス 16% 部長 取締役 副社長 図11 ロジスティクス幹部の勤務経験年数 現在の役職 現在の会社 ロジスティクス 業務 3.7 3.6 5.5 4.2 8.2 12.1 18.5 18.9 19.2 0 5 10 15 20 25(年) 6 7 5 65% 50% 40% 100% 100% 100% 100% 100% 100% 88% 96% 100% 71% 78% 100% 57% 46% 31% 50% 54% 53% 83 70 83 教育日数/年 パソコン業務 インターネット アクセス インターネット (オフィス) インターネット (自宅) インターネット (ラップトップ) インターネット (携帯端末) 携帯端末の利用 eメール/日 図12 どう働き、学んでいるか 部 長 取締役 副社長 SCM 財務/会計 コンピューター /情報/研究 国際ビジネス/ ロジスティクス 19.5% 19.5% 17% 17% 図13 90日間にわたる教育カリキュラム受講の可能性 特集 35 MAY 2005 てもらうよう回答者に聞いてみた。
この質問に対 する回答をコード化し、分類した。
その結果が図 15 に示されている。
二〇〇一年に行った調査で特定化された最も影 響力がある要因は、情報技術、SCMインテグレ ーション、顧客価値、eビジネスおよびインター ナショナルであった。
二〇〇二年になると、先に 取り上げた要因が移り変わり、財務パフォーマン ス、 SCMインテグレーション、グローバル・ビ ジネスおよび情報技術と、その重要性を基準にし た場合の優先順位が変わってきた。
二〇〇三年には再度要因が変化し、その順番に も変化が見られた。
優先順位でいうと、情報統 合/技術、SCMインテグレーション、顧客サー ビス/価値、CPRFそしてロジスティクス・イ ンテグレーションであった。
そして二〇〇四年は、技術/情報/統合(二八%)、 グローバリゼーション(二六%)、サプラ イチェーンの拡大と複雑性(二〇%)、ロジステ ィクス/サプライチェーン・コスト(十三%)、そ して在庫戦略(七%)という項目が挙がった。
結び 約二〇年にわたり、典型的なアメリカ企業のロ ジスティクス・オペレーションは安定してきてい る。
ロジスティクス関連の業務の中で一般的なも のとしては、伝統的に輸送と倉庫業務が中核にな っている。
これは必ずしも全ての企業に当てはま ることではないが、大多数の企業に当てはまるよ うに思われる。
ロジスティクスの機能を果たす組織形態は、四 つの基本形態のいずれかであり、ロジスティクス 上級管理者の肩書きも、限られた選択肢の中に収 まっている。
しかし二〇〇四年の調査結果は、安定していた 過去二〇年間とは異なっているように思われる。
分析のためにデータを細分化してあるので、調査 対象者が偏ってしまっている可能性は高い。
しか しパターンとしては、これまでの調査で分かった ことと非常に近いデータもあれば、内容が一致し ないものもある。
二〇〇四年に行った調査結果の中で新しく見ら れた傾向は下記の通りである。
?将来の予測に関していうと、どの話をしても現 在の幹部からでてくる言葉は、サプライチェー ンである。
これは単に幹部の肩書きとして表れ ているだけではなく、サプライチェーン分野で 競争していく上で必要となる新しい学習に対す る認識の中にも反映されている。
?第二の変化は、結果としてサプライチェーンと いう表記(言葉)が頻繁に使われている点であ る。
とりわけ企業が競争力を追い求めていく図 式を変えてきているのがグローバル・サプライ チェーンである。
これまでのロジスティクスに 関わってきた幹部が、ロジスティクス計画を考 え、実行していくやり方を変えてきている。
?結果として上記の二点に戻ることになるのだが、 世界市場と新しいグローバルな舞台でのロジス ティクス/サプライチェーンの役割をより戦略 的に見はじめたように思われる。
多くのロジス ティクス/サプライチェーンに関わっている幹部にとっての課題が、純粋なカスタマーサービ スの対応から、企業に持続的な競争力を取り込 むというロジスティクス/サプライチェーンの 役割へと変化してきている。
本来はこうした見解を唱えるには、全知でなけ ればならないだろう。
私の多くの学友は、「データ (の結果)にとらわれるな」と批判するかもしれな い。
しかし三四年間この調査を行ってきて、私は 正しいという「手応え」を感じている。
※オハイオ州立大学SCMリサーチ・グループJames L. Ginter / Bernard J. La Londe $50 $50,000 $89,250 $117,750 $182,500 $103,000 $230,000 $124,000 $143,750 $161,250 $310,000 $100,000 $150,000 $200,000 $250,000 $300,000 $350,000 25パーセン タイル 部長 取締役 平均 副社長 75パーセン タイル 図14 年収(賞与含む) 技術/情報/統合 グローバリゼーション サプライチェーンの 拡大と複雑性 ロジスティクス/ サプライチェーンコスト 在庫戦略 28% 26% 20% 13% 7% 図15 今後10年間でロジスティクスの成長と発展に影響を与える要因

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