ロジビズ :月刊ロジスティックビジネス
ロジスティクス・ビジネスはロジスティクス業界の専門雑誌です。
2001年7号
デジロジ
3PLの本質

*下記はPDFよりテキストを抽出したデータです。閲覧はPDFをご覧下さい。

JULY 2001 84 情報システムを武器に 3PLという言葉は、日本の物流業界に もすっかり定着したようだ。
しかしながら、 「サードパーティ・ロジスティクス? 何じ ゃそれは。
倉庫の裏でパーティでもやるんか い!」といった、冗談ともつかない言葉が交 わされたのも、つい先日のことだ。
一九九〇年代、バブル崩壊が深刻化する 我が国とは裏腹に、米国では景気回復が本 格化した。
そしてデルコンピュータやギャッ プなど、今ではSCMの教科書に必ず掲載 されている外資系企業が相次いで日本に進 出するようになって、国内の先進的な物流 企業の間で、3PLという言葉が話題にな り始めた。
そんな物流 企業とともにソフトハウスであ る当社もまた、これらの新しいトレンド(我 が国にとって)に呼応して、日本進出を狙 う海外企業および国内の外資系企業を対象 に、集中的に営業攻勢をかけた。
この経験 から、当社は大きな刺激を受けた。
「物流は我々の仕事ではないので専門家に 任せる」というハッキリとしたスタンス。
明 確な要求仕様を提示し、企業規模や過去の しがらみなどにはこだわらず、クールに業者 を選定する姿勢。
従来の国内企業向け営業 活動とは対照的な、オープンでフェアなビジ ネスのやり方に、なかば戸惑いつつも、物流 業界に大きな変革をもたらす新潮流の始ま り を実感させられた。
田中純夫エクゼ社長 3PLの本質 第4回  ここ日本でも多くの物流業者が3PLを自称するよう になった。
しかし、実際に3PLという看板に相応しい 機能を備えているプロバイダーは、限られている。
そこ で今回は、試みとして20項目にわたる3PLの評価基準 を作成してみた。
当社の場合は一般の物流業者とは異なり、 物流システムの立場からプランを立案し、 様々なコンペに参加する立場だった。
その結 果、試行錯誤を繰り返しはしたが、緒戦で 大きな成果をあげることができた。
当社のよ うな中小企業が大手企業に互する戦いを仕 掛け、勝ち抜くことができたことは、後々の 大きな自信につながった。
コンペの勝因は、当社が情報システムを競 争力の源泉として位置付け、「武器」としての システムの活用をアピールしたことに尽きる。
これまで、システムは合理化の道具として利 用されてきた。
いわば「守り」のツールだっ た。
とりわけ、保守的な物流 業界ではシステ ムを武器として使うという発想には乏しかっ た。
物流会社の大部分は、お金があればトラ ックを購入する、あるいは土地・倉庫を建 てるという「アナログ/ハード志向」が大勢 を占めていた。
これに対して、システムを武 器として3PLを展開するという、当社の 「デジタル/ソフト指向」はクライアントに は新鮮に映ったようだ。
その後もいくつかのプロジェクトを通じて 「攻めの物流こそ3PLであり、システムは 戦略兵器である」ということを繰り返し学ん だ。
今では、それが確信になっている。
SCMにおける3PLの役割 もっとも、現在の我が国の3PLが、本 当に3PLと呼べるだけの役割を果たして 85 JULY 2001 すると言って良いだろう。
なかには難しい項 目も列挙されてはいるが、業界で注目されて いる企業はこれらの条件を満たしていること も事実だ。
このような企業であれば、荷主の代理とし て、荷主が自分でやるよりも安く、確実にサ プライチェーンを実行し、さらには苦情を処 理し、SCMの販売活動、生産計画、需要 予測、決済などにリアルに貢献できるはずだ。
小泉内閣のデジタル政策 余談となるが、去る六月七日、東京・目 白のフォーシーズンズ椿山荘で、ザ・エコノ ミスト・カンファレンス主催の「B to B e ― ビジネス円卓会議:コスト削減と効率化の ビジネス戦略」が開催された。
その特別講演 として小泉内閣の経済財務政策担当大臣・竹中平蔵博士が、政府の進めるe ―Japa n構想を紹介した。
発言の中で注目された のはIT革命におけるデジタル化とインター ネットの役割についてである。
「IT革命では、あらゆる情報がデジタル 技術により数値化される。
つまり、一元的な デジタル情報として扱えることにより、たと えば音楽がアナログレコードからCDが発展 したように消費者の新しいライフスタイルを 創出し、企業にとっては新しいビジネスチャ ンスを見いだすことができるようになること である。
その、デジタル情報を送るものがイ ンターネットである」と竹中大臣は説明した。
また、リアクティブな(後向き)政策とし ング、返品、クレーム、季節変動、日、時 間帯変動など)を加工し、物流からみた 荷主企業へのSCMに役立つ情報提供が できること(DWHの活用)。
これらの機能を具備し、サービスが提供で きる物流企業が国内にどれだけあるだろうか。
そもそも3PLとは何なのだろうか。
市場の 実態は下記の通りで、自称「3PL」が大 半を占めているようだ。
?定義そのものが曖昧。
?従来の運送、倉庫業者が荷主の委託物流 を、単に3PLと呼んでいる。
?メーカーなどの物流子会社を3PL会社 と称している。
?商社(元請 けのみ)が窓口を保持しており、 それを3PLと称している。
3PL業者を評価する もちろん、自らが3PLと名乗らなくても 3PLとしての機能を立派に果たしている 企業が一方では存在する。
そこで私なりに過 去の事例から、3PLとしての要件をピッ クアップし、全二〇問を作成してみた。
3P L企業としての資質を自己採点、あるいは 荷主として協力物流会社を評価してみては いかがだろう(次頁表参照)。
賛否あろうが、概ね一〇ポイント以上で あれば平均的な3PL。
一五ポイント以上 であれば3PLとして必要十分な機能を有 いるのかについては異論も多い。
経済環境の 大変化と生き残りを かけて、今日の企業は SCMを本格化させている。
そこで最重視 されているのは次の二点である。
?在庫の削減 ?リードタイムの短縮 企業活動における売り上げの確保、利益 率の向上、顧客満足などを前提にしたうえ で、これらを達成するためには一元的、かつ リアルタイムな情報システムとニーズに対応 した物流体制が必須である。
そして、その実 行には物流のプロフェッショナルとしての3 PLの活用が重要なファクターになる。
実際、多くの企業がSCMの構築と歩調 を合わせて、従来は社内で実行していた機 能の一部を様々な形 で外注化(アウトソー シング)している。
なかでも物流は、キャッ シュフロー改善の特効薬として、アウトソー シングの最優先項目となっている。
物流業者がこうしたニーズに対応するには 下記の機能が必要になる。
?SCMに対応した戦略情報武装(物流機 器、車載機器、温度対応、通信、安全、労 務管理なども含む) ?ローコスト・オペレーション(パート、外 注管理能力があること) ?SCMに対応した稼動体制(時間、施設、 人的能力、代金回収など) ?ネットワーク(地域、共同) ?物流情報(在庫、入出庫、配送、ピッキ JULY 2001 86 が認識できた。
これからも如何に情報技術が 発展しようとも、経済社会の中で物流はさらに重要なものになるだろう。
あらゆるビジネスのリアリティは物流であ り、あらゆるビジネスは物流基盤の上に成り 立っている。
そして、SCMにおける3PL の本質は、物流システムを機軸としたビジネ スの「枠組みの構築」と「実行」を行うこと に他ならないのだ。
一九八三年、埼玉大学工学部卒。
物流企業系シス テムハウスを経て、九一年に独立。
エクゼを設立 し、社長に就任。
製造・販売・物流を統合するサ プライチェーンシステムのインテグレーターとし て活動。
九七年には物流管理ソフト「Nexus 」を 開発し、現在は「Nexus ?」にバージョンアップ してシリーズ展開してい る。
日本企業の物流事情 に精通したシステムイン テグレーターとして評価 が高い。
田中純夫(たなか・すみお) Profile て、不良債権処理等のバランスシート改善等 の実施。
一方、プロアクティブな(前向き) 政策として、オープンでフェアな競争政策の 実現と定着化、情報リテラシーのレベルアッ プ、分かりやすい成功例を明示すること。
そ して、規制緩和の必要性を強調していた。
それぞれ視点は異なるが、今日の経済・財 務の政策と、今日のロジスティクス・ビジネ スを考えることは、本質的に同じであること 明確な経営方針を持っている 業界・政界以外に豊富な人脈を持つ コンピュータに強い 海外、外資に強い。
相手がいかに大きくてもキッチリ物が言える 社員の採用・昇格は学歴・経歴にかかわらず機会均等で徹底した成果主義である 能力の高い(給与も高い)高度知識を持った実務者がいる 管理コストが非常に低く、財務内容が良い 自己資本に関わらず資金余力がある。
ベンチャーキャピタルなどの活用も含む 負の資産が少なく、流動性の低い設備投資は行わない プライベート、パブリックにかかわらず、情報開示に積極的である 業界の枠に入らない(既得権益に執着している所は無理) オープンであり、自信があるので、同業他社にも施設・業務運用、システムを見せ ることができる フェアである。
資金繰り信用不安説、訴訟問題説等、競合先の誹謗中傷など、この ような低俗なネタを営業に使わない 低コストの人的資源が確保できるシステムがあること (派遣業などのノンアセット型) 365日、24時間体制が組めるなどのフレキシビリティを有すること ビジネスのプラン立案、提案ができること クレーム処理が的確、迅速にできること インターネットに即時対応できること アウトソーシングの受け皿として機能すること 人材・施設・情報の共同化・共有化ができること 項  目 私家版: 3 P L の評価基準 10ポイント以上=平均的な3PL 15ポイント以上=トップクラスの3PL

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