ロジビズ :月刊ロジスティックビジネス
ロジスティクス・ビジネスはロジスティクス業界の専門雑誌です。
2001年6号
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フェデラルエクスプレス

*下記はPDFよりテキストを抽出したデータです。閲覧はPDFをご覧下さい。

JUNE 2001 74 資本のグローバル化 今回は米国の物流ガリバーであるフ ェデックスの経営戦略を分析してみた い。
今回に限らず、今後も機会を見な がら、海外の物流事業者の動向につい て取り上げていく予定である。
何故、このコーナーで海外の物流事 業者を取り上げるのか。
それは「グロ ーバル化」と「ボーダレス化」という 言葉が今後の物流業界のキーワードに なるはずだからだ。
この二つのキーワードには?事業の〞 と?資本の〞という二つの接頭語が伴 う。
?事業の〞「グローバル化」「ボー ダレス化」とは、インターネットや衛 星通 信などを活用した情報ネットワー クを武器に国際的なビジネスを展開し たとしても、必ず物流はついて回る、 ということを示している。
一方、?資本の〞「グローバル化」 「ボーダレス化」とは、国際的な物流 ネットワークを完備したり、グローバ ルなビジネスの金融決済を行うために は、フリーキャッシュフローを創出し、 その資金を駆使してあらゆる物流事業 者を傘下に治めていく、ということを 示している。
いずれにしても、国内の物流の動向 にばかり目を向けていると、国際的な 舞台で活躍するクライアント(荷主企 業)から見放されてしまう恐れがある。
そうならないよう、フェデックスをは じめとする世界の物流事業者は(トラ ック運送、航空貨物輸送、海上貨物輸 送などの)輸送モードに関わりなく、 事業エリアの拡大を目論んでいる。
海外事業者の日本進出について日本 の 物流企業の経営者と議論すると、過 去からの規制、商慣習、労使慣行を理 由に「日本では成功しないのではない か」といったような否定的な意見を耳 にすることが多い。
海外事業者の経営スタイルを検証し、 理解を深めておくことは競争時代を乗 り切るために不可欠なはずである。
し かし実際には、「海外事業者は何を考 えているのかわからない」という一言 で片付けてしまう経営者が少なくない。
それは海外企業の進出によって、自ら が抱いている懸念を増幅させるのを拒 否しているだけに過ぎないように見受 けられる。
ブランド戦略を重視 さて、フェデックスについては、そ の名前はもちろん、具体的なサービス 内容をご存じの読者も多いのではない だろうか。
今回は同社のビジネスの概 要および、将来の事業戦略を中心に、 日本の物流企業の戦略との相違点を念 頭に置きながら整理してみたい。
主に、以下の四つに焦点を当てて説 明していく。
?ブランドマネジメントのあり方 ?米国内の輸送事業の取り組み ?海外事業の展開 ?SCM(サプライチェーンマネジメ ント)やEコマースに対する対応施 策ま ず 、 ブ ラ ン ド マ ネ ジ メ ン ト の あ り 方だが、同社は「Re-Branding (リ・ブランディング、商標の統一)」とい う戦略を掲げ、主力三部門に「FedEx Express (航空貨物の速配事業)」、 「 FedEx Ground (小口貨物の宅配事 業)」、「FedEx Freight (長距離トラ ックでのB to Cの配送事業)」とFedEx の冠をつけて、国際的にFedEx ブラン ドを浸透させることを徹底している。
物流サービスのワンストップ・ショ ッピング機能を有している点を顧客に 第3回 フェデラルエクスプレス フェデラルエクスプレス(FedEx )がグローバル化 を加速させている。
相次ぐ企業買収で米国内のネット ワークを盤石なものにした同社は、UPSやドイツポ ストを向こうに回し、次にアジア市場の拡大を虎視 眈々と狙っている。
大手国際物流業者によるグローバ ル競争の波は当然、日本にも及ぶ。
北見聡 野村証券金融研究所 運輸担当アナリスト ※ 日本の物流企業も様々な情報システ ム投資を進めているが、それが全て顧 客ニーズに結びついているかどうか、 再考してみる必要があるのではないだ ろうか。
負け組時代の評価をバネに 同社は年初にUSPS(米国郵政公 社)との提携を発表している。
主な提 携内容は、基幹輸送部分のアウトソー シングを請け負うというもので、この 部分では日本の郵政公社と民間事業者 の関係と大きな差異がないように見え る。
ただし、米国の郵便局にフェデッ クスの貨物を集荷するためのドロップ ボックスを実験的に設置するなど、今 後の状況が大きく変わる可能性も高い。
それぞれの国の事情はあるだろうが、 いずれにしてもグローバルな視点で、 明確なコンセプトを持って経営を進め ている点には注目したい。
同社 も過去 数年間は資本市場で負け組の株価であ ったが、それをバネに経営スピードを 速めているのである。
75 JUNE 2001 対してアピールすることで、ライバル のUPS、ドイツポスト(旧ドイツ郵 政公社)グループ、TNT(旧オラン ダ郵政公社)など同業他社との差別化 を目論んでいる。
ここまでブランドマ ネジメントを意識し、徹底している企 業は、日本ではソニーなどの他産業に しか見ることができない。
次に、米国内で輸送事業だが、同社 は FedEx Ground 、 FedEx Freight を 軸に、ネットワークの拡大を図ってい る。
FedEx Ground は売上高約二〇億 ドルで、五二二拠点を持つ。
従業員は 三万五〇〇〇人。
一日一五〇万個の配 送を行っている(二〇〇〇年現在)。
注目すべきは二〇〇〇年三月に開始 した個人宅配事業を強化す る方針を打ち出している点 だ。
六七拠点、全米五〇% の人口カバー率だったネッ トワークを、二〇〇二年九 月には二九四拠点、九八% のカバー率まで高めると公 言している。
一方、FedEx Freight は売上高約一九億ドル、三 一九拠点を持つ。
従業員は 二万二六〇〇人で、八七〇 〇台のトラクタと二万四〇 〇〇台のトレーラーを保有 し、一日二五万個の配送を 行っている(二〇〇〇年現 在)。
米国内でのB to Cの貨物 配送を強化するため、大手 トラック事業者のViking と American Freightways を 買収し、全米ネットワーク を構築した。
企業買収など あらゆる資本的な手段を駆 使して、一気にネットワークを整備す る経営判断のスピードは圧巻である。
日本市場への本格進出も視野に 三番目の海外事業ではアジア圏での ネットワーク強化を重点課題の一つに 掲げている。
アジア市場は経済のグロ ーバル化が進む中で、最も成長余力が あると見られている。
同社にとって、 現在でも売り上げ成長率が二桁を超え ているのがアジア関連のビジネスである。
現在、アジアで生産されているモノ の八〇%は自国で消費されている。
し かしこれが今後二〇年以内に八〇%が 国境を越えて消費されるようになると の見方もある。
そうなると、好む好ま ないに関わらず企業はグローバル化を 迫られる。
その手助けを しようという のが同社のコンセプトである。
もちろん、日本もアジア戦略の重要 拠点の一つであり、今後、資本を投下 することについて否定はしていない。
最後のSCMやIT化対応では、 「 Single Point of Access 」というコン セプトを打ち出している。
例えば「一 回のウェブサイトへのアクセス、一本 の電話、一枚の伝票での処理を可能す る」などの効率的かつ簡素化された仕 組みを構築し、顧客にとって使い勝手 の良いサービスを提供することを目指 している。
●フリーキャッシュフロー FCF(フリーキャッシュフロー)と は、税引前営業利益に減価償却費を 加え、 設備投資と運転資本の増加を 差し引いたもの 《用語解説》 *出典:野村証券ホームページ

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